最初に現場の結論から。
テナントは住居とは話が違います。準備の差で、審査も物件の取り方も決まります。
こんにちは、だいきです。
今日は、これから飲食店や美容室などで「独立開業したい!」と思っている方に向けて、ちょっと厳しめの現実の話をします。
住居(居住用)を借りる感覚のまま、店舗(事業用テナント)を探そうとしていませんか?
はっきり言うと、その感覚のままだと「本当に良い物件」はなかなか回ってきません。
しかも厄介なのが、ネット上の「失敗しない契約術」「知っておきたいテナント審査」みたいな記事。
ああいうのをそのまま信じて、不動産屋に同じことを言ってしまうと、現場側からすると
「それを言われた瞬間に、この人とは契約したくないな…」
と感じてしまうNGワードが、いくつも混ざっています。
今回は、現役の不動産店長として、教科書にはまず載らない「テナント契約の実務と本音」を、現場目線でお話しします。
【この記事で分かること】
- スケルトン店舗の内見に「内装業者を連れていった方がいい」本当の理由
- ネットでよく見る「停止条件付き契約(融資特約)」が、実務では嫌がられやすいワケ
- それでもどうしても物件を抑えたい時に、オーナーの心を動かす交渉の仕方
- 審査で一歩抜け出すための「事業計画書」の出し方と、信用を勝ち取る考え方
スケルトン店舗の内見は「内装業者」を連れてこい
まずはスケルトン物件(内装や設備が何もない状態)の内見について。
これから初めてお店をやろうとしている方の中には、
- 自分ひとり
- パートナーと二人だけ
で見に来る方が、けっこう多いです。
結論から言うと、本気でその物件を狙うなら、できるだけお抱えの内装業者さんも一緒に来てもらった方がいいです。
理由は大きく2つ。
■理由①:テナントは「スピード勝負」だから
人気エリア・好条件のテナントは、完全に取り合いの世界です。
「いい物件ですね!一度持ち帰って、後日内装屋さんにも見てもらいます」
このスタイルだと、経験的に言ってその間にライバルに取られます。
内装屋さんが一緒に来ていれば、その場で
- ここに厨房を作れるか
- ダクトを通せるか
- 電気容量やガス・排水は足りるか
といった“勝負どころ”を一気にチェックできます。
つまり、「内見=一次審査」「内装屋さん同行の内見=最終面接」くらい、スピード感が違うんです。
■理由②:素人には分からない「設備的にNGな物件」がある
もう一つ、大事なポイントが設備的な可否の判断です。
- 電気容量が足りない
- ガス管の径が細すぎる
- 排水勾配が取れない
- ダクトの取り回しが物理的に無理
こういうのは、どれだけネットで勉強しても、正直、素人目には分かりません。
「ここで飲食店をやりたい!」と思って契約してから、
工事に入ろうとしたタイミングで
「そもそもこの建物の構造上、その業態は難しいです」
となるケースも実際にあります。
スケルトンでも大丈夫な人って、そもそも経験値が高いか、すでに内装屋さんとの付き合いがあることが多いです。
だからこそ、本気の人ほど最初からプロを連れてくる、ここは覚えておいて損はないです。
🔥 店長直伝:スケルトン内見で必ずやること
- 本気で狙う物件は、できれば内装業者さんと一緒に内見する
- 電気・ガス・排水など、設備的に「工事しても大丈夫か」をその場で確認
- 内装業者がまだ決まっていない人は、物件探し前に候補を押さえておく
「停止条件付き契約(融資特約)」は、実務ではかなり嫌がられる
次に、ネットの記事でよく見るのが
「融資が通らなかった場合に備えて、停止条件付き契約にしてもらいましょう」
というアドバイス。
これは「融資特約」と呼ばれることもあって、
- 契約はする
- でも融資が下りなかったら契約は白紙
という条件のことです。
借りる側からすると、リスクを抑えられる“正論”に見えますよね。
ただ、現場の感覚から言うと、正直これは
「あまりにもオーナー側のリスクが高すぎる条件」
なんです。
テナントの契約って、契約に至るまでに
- 募集を止める
- 申込を受けて審査を回す
- 契約書・重説を作る
- 日程調整して契約を行う
など、かなりの労力がかかっています。
それを全部終えたあとで、
「融資が落ちたので、やっぱり白紙で。すみません」
と言われたら、オーナーには1円も入らず、不動産会社の労力もすべてゼロになります。
⚠ 要注意:停止条件付き契約が嫌がられる理由
- 契約書作成や重説など、オーナー・不動産屋の手間だけ先に発生する
- 融資NGになると、契約が白紙なのに1円も入らない
- その間は他の申込を止めるため、機会損失リスクが大きい
→ 借りる側だけが安全になる条件は、現場ではかなり敬遠されやすいという前提を覚えておきましょう。
なので実務では、
「融資がダメだったら契約は白紙で当然でしょ?」
というスタンスで来られると、
オーナー・不動産屋ともに
「この人とはあまり深く付き合いたくないな…」
と感じてしまうのが本音です。
制度として“融資特約”が存在するのは事実ですが、
「ネットに書いてあったから当然の権利」
みたいな入り方をすると、そもそも土俵に上げてもらえない可能性がある、
というのは知っておいてほしいポイントです。
それでも物件をどうしても抑えたいなら、「自分もリスクを負う」
とはいえ、現場をやっているとこういう場面もあります。
- まだ融資は確定していない
- それでも、この物件だけはどうしても逃したくない
こんな時に、どうすればオーナーを納得させられるか。
ここからは、本気でやりたい人だけに使ってほしい交渉の話です。
ポイントは一つ。
「オーナーだけにリスクを押し付けない。自分も痛みを負う覚悟を見せる」こと。
例えば、申し込みの際に自分からこんな条件を出すイメージです。
- もし融資が下りずに解約になった場合は、違約金として賃料1ヶ月分をオーナーに支払う
- その際、不動産屋に支払った仲介手数料の返金も求めない
ここまで自分から言える人は、実際ほとんどいません。
だからこそ、オーナーや不動産屋からすると
「この人は本気で事業をやるつもりなんだな」
「自分のリスクもちゃんと背負う覚悟があるな」
と伝わりやすく、融資決定前でも「じゃあ一旦この人で進めてみようか」となりやすくなります。
事業をやるというのは、そもそもリスクを取るということです。
オーナーにだけノーリスクを求めるのではなく、
「自分もちゃんと痛い思いをする覚悟があります」
という姿勢を見せられるかどうか。
そこが、テナント契約の交渉で一歩抜け出せるかどうかの、分かれ目の一つです。
※もちろん、具体的な条件は物件やオーナーによって全く違うので、最終的な契約内容は必ず担当者や専門家と相談してください。
※これはあくまで「ライバルに競り勝つための強力な交渉カード」です。
もし融資が通らなかった場合、あなたに金銭的な損失が発生する「諸刃の剣」でもあります。
安易に使わず、「絶対にこの物件で勝負するんだ」という覚悟が決まった時だけに使ってください。
審査書類の裏ワザ。「事業計画書」は、頼まれてなくても出せ
最後に、保証会社の審査で差がつくポイントを一つ。
テナントの審査では、保証会社が用意した
- 事業内容の補足事項
- 簡単な予定売上や業種を書く紙
のような、A4一枚の簡単な書類を書いてもらうことが多いです。
多くの人は、言われたその紙だけを書いて提出して終わりです。
でも、もしあなたがすでに事業計画書をしっかり作っているなら、
たとえ「必須」と言われていなくても、一緒に出した方が絶対に得です。
保証会社の担当者は、送られてきた書類だけで
- この人はどれくらい本気なのか
- ちゃんと計画性があるのか
を判断します。
- 補足事項の紙だけ、サラッと埋めた人
- そこに加えて、収支計画やコンセプトが書かれた事業計画書も添えてきた人
どちらの方が「真剣に準備している人」に見えるかは、言うまでもないですよね。
保証会社が特に求めていない書類を、あえてきちんとした形で出してくる。
これだけで、「この人はちゃんと考えているな」というプラスのサプライズになります。
✅ 審査で好印象になる3つの一手
- 指定された書類だけでなく、事業計画書も一緒に提出する
- 「自己資金か・融資か」「融資の進捗」を、先に正直に伝える
- 数字だけでなく、コンセプトや想いも簡単にまとめておく
→ 「頼まれていないのにここまで出してくる人」は、保証会社・オーナーから一段上の本気度として見てもらえます。
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まとめ:テナント契約で見られているのは「お金」だけじゃない
住居の審査では、年収や勤め先といった“スペック”を見ることが多いですが、
テナントの審査では、それに加えて
- 経営者としての覚悟
- 準備の度合い
- オーナー側のリスクを想像できているか
といった、「人としての信用」がかなり大きく見られます。
この記事のポイントをもう一度整理すると、
- スケルトン物件の内見は、できればお抱えの内装業者さんと一緒に行く
- 「停止条件付き契約(融資特約)」は、実務ではオーナー側にとってリスクが高く、敬遠されやすい
- それでも抑えたい物件があるなら、自分もリスクを負う条件を自ら提示することで、本気度を伝える
- 事業計画書があるなら、求められていなくても提出して、保証会社の心証を一歩リードする
これから一国一城の主になろうとしている方こそ、
ネットの“きれいごとだけの記事”ではなく、現場の本音ベースの情報を味方につけてほしいなと思います。
テナント探しのパートナーとして、不動産屋をうまく使いながら、
良い物件と、気持ちよく付き合えるオーナーさんに出会ってください。


