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こんにちは。不動産業界14年目、現役不動産店長・宅建士のだいきです。
ポストに届いた更新書類の封筒を開けて、ドキッとした経験はありませんか?
「契約更新のお知らせ」
そこまではいいのですが、問題はその中身です。
「近隣相場の上昇に伴い、次回の更新よりお家賃を5,000円改定させていただきます」
決定事項のようにサラッと書かれているけど、年間で考えれば6万円の負担増。
ここで多くの方が「悔しいけど従うしかないのか…」「嫌なら引っ越せってことか…」と諦めて、ハンコを押してしまいます。
でも、ちょっと待ってください。
そのハンコ、まだ押さないでください。
現役で不動産屋の店長をしている私から、はっきり言います。
家賃の値上げは拒否できます。拒否しただけで追い出されることもありません。
そして、話し合いがまとまらないまま期限が来たときに出てくるのが、借主を守る仕組みとして知られている「法定更新(ほうていこうしん)」です。
今回はこの仕組みと、現場で実際に起きる注意点まで、できるだけ分かりやすく説明します。
※この記事は一般的な情報です。個別の案件は契約内容や状況で結論が変わるため、必要に応じて専門家にも確認してください。
この記事で分かること
- 家賃値上げが「決定」ではなく「提案」な理由
- 交渉がまとまらないときに起きる「法定更新」の仕組み
- 法定更新で更新料がどうなるか(よくある誤解)
- 実務上のデメリット(対応・書類・退去時などの現実)
家賃値上げの通知は「命令」ではなく「提案」
まず大前提として、これだけは覚えておいてください。
更新時の家賃改定(値上げなど)は、大家さんからの一方的な「命令」ではありません。あくまで提案です。
賃貸借契約の更新は、本来、貸主(大家)と借主(あなた)の合意があって成立します。
つまり、あなたが「納得しました」と言わない限り、新しい家賃は確定しません。
どれだけもっともらしい理由(物価高、固定資産税の上昇など)が書かれていても、納得できなければ「合意しません」と伝えること自体は、法律上おかしな話ではありません。
「でも合意しなかったら『じゃあ更新させない、出て行け』って言われるんじゃ…?」
ここが一番不安ですよね。
ただ、ここも大事な点で、日本の借地借家法は借主の権利を強く守る設計です。
大家さん側が更新を拒むには、基本的に正当な理由が必要になります。
値上げ拒否=追い出し理由にはなりません。
では、話し合いがつかないまま契約期限が来たらどうなるのか。
そこで出てくるのが「法定更新」です。
「法定更新」とは何か
法定更新を一言でいうなら、こういう仕組みです。
合意がまとまらないまま期限が来ても、契約は切れず、原則として従前条件で続く
借地借家法26条の考え方としては、ざっくり言うと
「更新拒絶をするなら、期間内に通知が必要/しかも正当な理由が必要。満たせないなら、同じ条件で更新したものとみなす」
というイメージです。
つまり、値上げを拒否し続けて、双方が新しい契約書にハンコを押さないまま満了日を過ぎたとしても、そこで契約が切れて終わりではありません。
法律上、契約が続く扱いになります。
そして原則は「従前の契約と同一条件」。
つまり、家賃は現状のまま据え置きになりやすい。
これが、法定更新が「借主を守る」と言われる理由です。
「更新料が消える」は半分正しくて、半分は契約次第
ここ、誤解が多いので丁寧に言います。
法定更新になると、一般的には「期間の定めがない契約」に移る扱いになります。
その結果、いわゆる「2年ごとの更新手続き」が減ったり、更新料の考え方が変わることがあります。
ただし、更新料が必ずゼロになると決めつけるのは危険です。
- 契約書に「法定更新でも更新料(相当額)を支払う」と書いてあるケース
- 「更新料」ではなく「更新事務手数料」「再契約料」など別名目で運用しているケース
- 地域や管理会社の運用差
こういうのが普通にあります。
現場感で言うと、“次回以降も更新料が確実に消える”とは言い切れない。
ただ、「値上げを止める」という目的に対しては、法定更新が交渉材料として効く場面は多いです。
管理会社へ値上げ拒否を伝える文面(角が立ちにくい版)
理屈は分かっても、実際どう言えばいいか悩みますよね。
おすすめは、感情を乗せず、短く、事務的に。
そのまま使える文面を置いておきます(状況に合わせて調整してください)。
件名:契約更新条件(賃料改定)について/部屋番号・氏名
〇〇管理会社 ご担当者様
お世話になっております。〇〇マンション〇〇号室の〇〇です。
更新書類を拝受いたしました。記載の賃料改定(増額)について検討しましたが、現状では増額に同意が難しい状況です。
つきましては、従前の賃料(現行賃料)での更新を希望いたします。
なお、賃料改定の条件で合意に至らない場合でも、契約の扱いについては法令に基づき対応したく存じます。
お手数ですが、従前賃料での更新可否についてご回答をお願いいたします。
氏名
電話番号
※ポイントは「知ってますよ」を匂わせつつ、ケンカ腰にしないこと。
「法定更新で住まわせろ!」と強く書くより、淡々とが効きます。
ただし、現場では「感情のしこり」が残ることがある
ここからは現役店長としての本音です。
法律上は正しくても、相手は人間なので、関係がこじれるリスクはゼロではありません。
1)大家さんとの関係が気まずくなる
値上げをお願いして断られた側は、内心おもしろくないこともあります。
挨拶が減る程度で済めば良いですが、「気まずさ」は覚悟が要ります。
2)設備トラブルの対応が遅くなる可能性
修繕義務はあります。とはいえ現場では、手配の優先順位や温度感に差が出ることはあります。
もちろん催促すれば動きますが、やり取りが増えるのはしんどいです。
3)退去時の精算が細かくなることがある
もちろん国交省のガイドラインはありますが、あくまで「目安」に過ぎません。
大家さんが感情的になって「契約書通りキッチリ請求するからな」と重箱の隅をつつくような査定をしてきた場合、それを覆すための交渉にはかなりのエネルギーを使います。
4)会社提出の書類が必要な人は要注意
住宅手当などで「更新後の契約書」や「押印書類」が必要な会社だと、法定更新はやりにくいケースがあります。
書類運用が必要な人は、先に会社の必要書類を確認しておくのがおすすめです。

【重要】法定更新でも値上げリスクはゼロではない
法定更新すれば自動的に現状維持になりますが、
これは「値上げを永久に防げる」という意味ではありません。
大家さんには「賃料増額請求権」(借地借家法32条)があります。
これは契約更新とは別の権利で、
「周辺相場と比べて家賃が不相当に安い」場合、
調停や裁判を通じて適正賃料への引き上げを求めることができます。
現場の実態としては:
- 少額の値上げ(月数千円)でここまでする大家は少ない
- 調停・裁判には時間とコストがかかる
- ただし「絶対に起きない」とは言い切れない
つまり、法定更新は「時間稼ぎ」や「交渉材料」にはなっても、
「永久に値上げを防ぐ魔法」ではない、ということです。
まとめ
家賃の値上げ通知は、あくまで「提案」です。
知らないと「従うしかない」と思いがちですが、知っていれば選択肢が増えます。
- 家賃値上げは、合意しなければ確定しない
- 交渉がまとまらなくても、状況によっては法定更新で契約が続く
- 更新料の扱いは契約次第なので、契約書の特約は必ず確認
- 現場では「関係性」「書類」「退去時」などの実務リスクもある
言われるがままにハンコを押す前に、一度立ち止まって、条件と今後の住み方を整理してみてください。

