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※内容は筆者の実体験と、現場で実際に起きている運用をもとにまとめています(物件や会社方針で例外はあります)。
SNSやYouTubeで、こういう話をよく見かます。
「仲介手数料は法律で0.5ヶ月分って決まってる!」
「1ヶ月分請求されたら違法だから交渉で取り返せ!」
これを見て、「次の引越しは絶対に交渉して安く済ませるぞ」と思う方もいるはずです。
こんにちは。現役不動産店長のだいきです。
結論から言います。
その知識を武器にして、人気物件で“手数料半額”を強気に主張した瞬間、部屋を借りられなくなる可能性が一気に上がります。
今日は、ネットの知識だけだと見落としがちな、「現場の商流」と「大家さんの心理」を、なるべく分かりやすく暴露します。
この記事で分かること
- 「仲介手数料は原則0.5ヶ月分+税」という知識が、なぜ現場で“負け筋”になり得るのか
- 交渉した瞬間に起きる「ババ抜き」構造(誰が不足分を負担するか問題)
- 「一番手」だったはずなのに、ひっくり返される理由
- それでも初期費用を下げたい人が、損せず狙うべき選択肢
まず法律の整理。「原則0.5ヶ月」は正しいが…
先に、前提だけ整理します。
SNSで言われていることは、条文上は間違いではありません。
- 原則: 貸主0.5ヶ月分+税・借主0.5ヶ月分+税(合計1ヶ月以内)
- 例外: あらかじめ承諾を得ていれば、片方から1ヶ月もらってもOK(ただし合計1ヶ月以内)
ここだけ見ると、「ほら、原則0.5ヶ月じゃん」と思いますよね。
でも現場では、多くの賃貸仲介で申込時に 「手数料1ヶ月(税別)を承諾します」という署名欄が用意されていて、そこにサインをもらうことで例外(合意)が成立しています。
問題はここからです。
「私はそのサインを拒否します。法律通り0.5ヶ月にしてください」
と主張した瞬間、裏側で何が起きるのか?
交渉した瞬間に起きる「ババ抜き」現象
あなたが「0.5ヶ月しか払いません」と言ったとします。
不動産会社はボランティアではないので、
減った0.5ヶ月分をどこかで回収しないと、商売として成り立ちません(※上限は合計1ヶ月の範囲)。
そこで、現場では法律の原則通りにするために、こういう確認が発生します。
不動産会社 → 大家さん(オーナー)へ連絡
「借主様が仲介手数料0.5ヶ月で進めたいとのことです。残り0.5ヶ月分をオーナー様側でご負担いただけますか?」
はい、ここでババ抜きが始まります。
大家さん:
「え?なんで私が払うの?他の申込者は条件のまま進むよね。今回は見送りで。」
これが、現場でめちゃくちゃ多い流れです。
つまり――
あなたが0.5ヶ月で通したい=不足分を誰かに押し付ける交渉になりやすい。
だから、人気物件ほど「じゃあ他の人で」で終わりやすいんです。
【⚠️現役店長のぶっちゃけ話】
もっと裏側の話をします。
法律を振りかざして「0.5ヶ月にしろ!」と来る方に対しては、僕らも人間なので「防衛本能」が働きます。
自分たちの身(売上)を削りたくないし、面倒事に巻き込まれたくない。
だから、大家さんに聞くまでもなく「その条件では無理です(とオーナーに聞いた体で断る)」ことが実務ではよくあります。
(※仲介会社だとそもそも大家さんに交渉する権限がないことも多いです)
しかし、逆もまた真なりです。
法律云々ではなく、「予算が厳しくて…なんとかお願いできませんか?」と丁重に相談してくれるお客さんに対しては、話が別です。
「この人のためなら、大家さんに無理を言わず、うちの会社の利益(仲介手数料)を削ってでも安くしてあげよう」
現場では、こういう「男気値引き」みたいなことはしょっちゅうあります。
結局、手数料を決めるのは「法律」ではなく、「目の前の営業マンの心」だということです。
※ただし、新築や超人気物件だけは、営業マンがいくら頑張りたくても「定価で埋まる」ので物理的に無理です。そこだけは許してください!(笑)
「一番手」の権利は、交渉した瞬間に消滅する
ここ、めちゃくちゃ勘違いされがちです。
「でも私が一番最初に申し込んだんだから、優先権があるはずでしょ?」
現場の“実質”で言うと、不動産の「一番手」ってこういう意味です。
「募集条件(満額)で契約する意思を示した人」の中での一番手
あなたが「手数料を下げてください(条件変更)」と言った瞬間、
あなたは自分からこう宣言したのと同じになります。
「条件変更の交渉枠に移動します」
その間に、二番手の人がこう言ったらどうなるか。
「募集条件のままでOKです。手数料も普通に払います」
大家さんも管理会社も、不動産会社も、だいたい同じ判断をします。
- A:条件変更を求める人
- B:条件通りにスムーズに進む人
人気物件ほど、Bが勝つ。
これ、差別とかじゃないです。単純にビジネスとして合理的なんです。
「手数料交渉」=「入居後トラブル予備軍」のレッテルが貼られることも
もう一つ、現場の本音です。
初期費用の段階で、法律や権利を前面に出して強硬に詰めてくる人を見ると、大家さんだけじゃなく、管理会社側もこう想像することがあります。
「入居後も“権利”で細かく揉めそうだな」
「クレームや要求が多そうだな」
「面倒を避けるなら、今回は別の人にしよう」
賃貸は、結局「誰を住まわせるか」の判断が入ります。
条件が同じなら、多くの場合、“揉めなさそうな人”が優先されます。
数万円を下げるつもりが、
「要注意人物」っぽく見えて、住みたかった部屋を失う。
これ、普通に起きます。
どうしても安くしたいなら「大家さん負担」か「フリーレント」を狙え
じゃあ、「安く借りるのは無理なの?」って話ですよね。
結論、無理じゃないです。やり方を変えるだけです。
ポイントはこれ。
交渉で奪うんじゃなく、最初から“安くなる設計”の物件を狙う。
具体的にはこの2つが鉄板です。
① 大家さんが手数料を負担してくれる物件
「早く決めたいから、手数料はオーナー側で持つよ」というタイプ。
この場合は、堂々と 借主の手数料0円(または半額) が成立します。
② フリーレント付き物件
最初の1ヶ月〜数ヶ月、家賃がタダ。
初期費用トータルで見れば、手数料値引き以上に効くケースもあります。
ただし、現場の一言も添えておくと――
この条件が付く物件は、「そうしないと決まりにくい事情」がある場合もあります。
(立地、条件、人気度、タイミングなど)
だからこそ、条件の“裏”もセットで見るのが大事です。
番外編:それでも店長が「値引きしてでも通したい」と思う瞬間
ここまで厳しい話をしましたが、私は「交渉するな」と言いたいわけじゃありません。
先ほどの「ぶっちゃけ話」でも書きましたが、結局、運命を分けるのはこれです。
言い方と、人としての愛嬌。
- ×「法律違反ですよね?安くしろ」
- ○「予算が厳しくて…大好きな物件なんですが、何か抑えられる方法ありますか?」
後者みたいに相談されたら、私も人間なので、普通に動きたくなります。
実際、こういう方はいます。
- 話が通じる
- 連絡が早い
- こちらの説明を理解してくれる
- オーナーへ安心して紹介できる
こういう人なら、私は「オーナーへ押し付ける交渉」ではなく、
自社の取り分を削ってでも調整する選択肢を検討します。
これは権利ではなく、“味方になりたい”という感情です。
現場って、結局ここが強いです。
ただし「新築・建築中(=人気物件)」だけは諦めろ。交渉した瞬間に負けるぞ
最後に、ひとつだけ「絶対に交渉で消耗しない方がいい物件」を伝えておきます。
それが、「新築(特に建築中)」、そして問い合わせが多い“人気物件”です。
新築って、まだ完成もしていないのに申し込みが殺到する「超・売り手市場」なんですよね。
大家さんも強気だし、あなたの後ろには「定価でもいいから住みたい!」というライバルが何人も並んでいます。
この状況で「手数料を…」「家賃を…」なんて言ったらどうなるか。
その場で保留扱いになっている間に、満額で動ける人に決まることがよくあります。
新築を狙うなら、条件は一切飲んで「スピード勝負」で確保するしかありません。これは鉄則です。
交渉するなら、大家が痛まない「火災保険」を見直せ
「新築だから交渉できない…でも、初期費用は抑えたい…」
「手数料交渉は怖いし、審査に落ちるのも嫌だ…」
そんな方に、現役店長から“誰とも揉めないコストダウン”を一つだけ教えます。
仲介手数料みたいに「大家さんの財布が痛む」交渉をするより、火災保険を自分で加入する(=大家さんは痛まない)ほうが、ハードルが圧倒的に低いです。
これだけで、誰とも揉めずに1.5万円〜2万円くらい安くなるケースは普通にあります。
まずは「指定保険じゃないか」だけ確認してみてください。聞くのはタダ、下がれば数万円です。
▼【関連記事】言われるがまま払ってない?火災保険を自分で入って初期費用を半額にする方法
【内部リンク:「29話:言われるがまま払ってない?現役店長が教える「火災保険」を自分で入って初期費用を半額以下にする裏ワザ」】
※本記事は一般論です。物件や管理会社の方針で運用が異なるため、実際の条件は募集図面・契約書面・担当者の案内をご確認ください。
まとめ:権利を主張して「物件」を失うな
- SNSの「原則0.5ヶ月」は条文上は正しい
- ただし現場は、申込時の合意(1ヶ月承諾)で回っていることが多い
- 半額交渉は「不足分を誰が払う?」のババ抜きになりやすい
- 交渉した瞬間、“一番手”から外れて逆転負けしやすい
- 本当に安くしたいなら、最初から大家負担やフリーレントを狙う方が安全
- どうしても相談するなら、論破じゃなく「味方化」が勝ち筋
本当にその部屋が気に入っているなら。
数万円の交渉でリスクを踏みに行くより、確実に確保する方が、結果的に後悔しません。
現場からは以上です。
あなたの新生活が、つまらないミスで消えないように。
P.S. 今回の「仲介手数料(報酬)」の上限ルール、実は宅建でもよく出る頻出ポイントです。
「こういう法律の理屈、嫌いじゃないな」と思った方は、不動産業界向きかもしれません(笑)
私が仕事しながら一発合格した“理解先行”の勉強法は、こちらでまとめました。
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