「木造はうるさいから絶対に嫌!」
「鉄筋コンクリート(RC)なら防音は完璧でしょ?」
部屋探しの現場で、毎日のように聞く言葉です。
その気持ちは、正直めちゃくちゃ分かります。
でも、現役店長として本音を言わせてください。
「RCだから静か」とは限りません。
そして、「木造でも静かな部屋」は普通に存在します。
構造という“スペック”だけで判断して、
家賃が高いのに実は壁が薄い物件を選んでしまう前に。
プロが図面を見るときに必ずチェックしている
「隣との接触面(間取り)」の話をしておきます。
- RCでも静かとは限らない (戸境壁が乾式=石膏ボードのケースもある/物件次第)
- 木造・軽量鉄骨でも“当たり間取り”なら勝てる(収納・水回り・廊下がワンクッション)
- 図面で「戸境ライン」をなぞるだけで、地雷配置はかなり回避できる
「RC=防音最強」の嘘。コンクリなのは“骨組み”だけかも?
躯体はRCでも、隣との壁は「石膏ボード(乾式壁)」のパターン
まず知っておいてほしいのは、
「鉄筋コンクリート造(RC)」と書いてあっても、
それが “全部コンクリの塊” とは限らない ということです。
隣との仕切り(戸境壁)が「乾式壁(石膏ボード+断熱材など)」になっている物件もあります。
※ただしこれは物件次第で、戸境壁がコンクリート(RC)でつくられている住戸も普通にあります。
特に超高層(いわゆるタワマン)では、軽量化などの事情で乾式の“耐火・遮音”壁が採用されるケースもあるので、「RC表記=戸境壁まで全部コンクリ」とは限らない、くらいに捉えるのが安全です。
乾式壁=全部ダメ、という話ではありません。
乾式でも静かな部屋はありますし、逆にRCでも“配置”次第でハズレはあります
ただ、
「RCって書いてある=分厚いコンクリ壁で最強防音」
と決めつけて入ると、
壁をコンコン叩いた時の軽い音に「え、思ったよりスカスカじゃない…?」と不安になる人が多いのも事実です。
「構造」と「壁の厚さ」は別物だと心得る
ここで大事なのは、
- 構造表記(木造・軽量鉄骨・RC)
- 実際の戸境壁の仕様・厚さ
は 別の話 だということです。
募集図面やポータルサイトのスペック欄には
「RC」「鉄骨造」とは書いてあっても、
- 隣との壁が何ミリか
- どんな工法か
までは、まず書いてありません。
だから、「RCという名前だけで過信しない」ことが大事です。
木造・軽量鉄骨でも勝てる。「当たり間取り」の3条件
最強の緩衝材は「収納・水回り・廊下」
構造よりも効いてくるのが、
「隣との間に何が挟まっているか」 です。
- クローゼット
- 脱衣所
- 浴室・トイレ
- 玄関まわり・廊下
こういった「緩衝ゾーン」が
自分の居室と隣戸の居室の間に挟まっていると、
木造や軽量鉄骨でも体感はかなりラク になります。
逆に、RCだろうが何だろうが、
「自分のリビングの壁の裏が、隣のリビングのテレビ裏」
みたいな「居室ど真ん中同士が一枚壁でベタ付け」の間取りは、
構造に関係なく、音トラブルの温床になりがちです。
玄関・水回り・収納が「ワンクッション」になっているタイプ
だいき目線で「当たりだな」と思うのは、
お互いの居室が直接くっつかず、その間に“ワンクッション”入っている間取りです。
イメージとしてはこんなタイプ。
- 隣戸どうしの 玄関が背中合わせ になっている
- 玄関の奥側に、浴室・洗面所・トイレ・収納が並ぶ
- さらにその奥に、それぞれのリビング・寝室がある
この配置だと、隣と「壁一枚でガッツリ当たっている」のは、
- 玄関まわり(人の出入り中心の場所)
- 浴室やトイレなど、水回りゾーン
といった “通過点” 的なスペースがメイン になります。
一番ストレスになりやすい
- テレビの音
- 子どもの泣き声
- 就寝中の生活音
といった「居室ど真ん中の音」は、
そこから一段奥にズレるので、
構造が木造・鉄骨でも、体感はかなりマイルド になります。
逆に NG なのは、
- 自分の寝室の裏が、隣のリビング
- ベランダ面いっぱいが、隣のリビングとベッタリ接している
みたいな、居室と居室がガチンコで当たっているケース。
これはRCでも普通にきついので、間取り図の段階で避けた方がいいです。
「接している面積」が少ない部屋を狙え
もうひとつ、見てほしいのが
「接している面積」 です。
- 隣と長い面でベッタリくっついているのか
- 角部屋や階段状の間取りで、接している部分が一部だけなのか
これだけでも、音の入り方はかなり変わります。
- 角部屋
- 変形地に建っていて、住戸がずれて配置されている物件
なんかは、「点」や「線」でしか当たっていないパターンも多く、
構造は木造でも、体感はむしろ静か ということも全然あります。
プロはここを見る!図面でなぞる「戸境ライン」の重要性
自分の寝室の裏側は「相手の何?」
図面を見るとき、私が必ずやるのが、
「自分の寝室の裏で、隣は何をしているのか?」
を想像することです。
一番危険なのは、
自分の寝室の裏側 = 隣のリビング(テレビ置き場)
という組み合わせ。
こっちが寝たい時間に、
隣でテレビ・ゲーム・子どもの遊びタイム…となると、
生活リズムがズレている場合はかなりきついです。
逆に、
- 寝室の裏が、隣も寝室
- 寝室の裏が、隣の収納・廊下
みたいなパターンは、夜の静けさを確保しやすいです。
図面だけで「地雷配置」はかなり見抜ける
内見に行く前にできることとして、
- 自分の部屋の「戸境ライン(隣との境)」を指でなぞる
- その裏側に、隣のどの部屋がくるかをイメージする
これだけでも、音の地雷パターンの8割くらいは回避できます。
- 寝室の隣に、隣戸のリビングがベッタリ
- ベランダの先が、隣のリビングのど真ん中
こういう図面は、構造が何であれ要注意です。
内見時の「壁コンコン」は、正直アテになりません
音だけで中身を見抜くのはプロでも無理
よく「内見のときは壁をコンコン叩け」と言われますが、
正直、音だけで中身を判断するのはプロでも難しいです。
- 中身がコンクリでも、その手前に石膏ボード下地があれば軽い音はします
- 逆に、あまり響かなくても、防音性能が高いとは限りません
壁紙・下地・仕上げ材の影響も受けるので、
素人判断で「音が軽い=終わった」と決めつけるのは危険です。
叩くよりも「配置」と「隙間」を見ろ
叩くよりも見てほしいのは、むしろこっちです。
- さっきまで話してきた「隣との配置」
- コンセントや配管まわりに隙間が空いていないか
- サッシのグレード(ペアガラスかどうか など)
こういう “目で確認できる要素” の方が、
防音の手がかりとしてはよほど信頼できます。
まとめ:構造という「名前」より、実際の「配置」を信じろ
- 「RCだから安心」という思考停止はやめる
- 躯体RCでも、戸境壁が乾式・石膏ボードのケースはあり得る(物件次第)
- 木造・鉄骨でも、「収納・水回り・玄関」がワンクッション入っている間取りなら、体感はかなり静かにできる
- 内見時は壁を叩くよりも、この壁の向こうで、隣の人は何をしているか? を想像することがいちばん大事
構造という「名前」だけで家賃を上げるより、
“当たり間取り”を引きにいった方が、コスパは確実にいいです。
この視点を一度身につけておけば、
家賃を抑えつつ静かな部屋を見つける、
ちょっとした“お宝探し”ができるようになります。


