「プロパンガス(LPガス)は高いから絶対にイヤ!」
「条件は“都市ガス”必須で!」
お店でこう言うお客様、本当に多いです。
その気持ち、痛いほど分かります。たしかに単価だけ見ればプロパンは高いです。
でも、現役店長として本音を言わせてください。
「そのこだわりで、もっと大きなお金をドブに捨てていませんか?」
今日は、多くの人が勘違いしている「都市ガス vs プロパン」の本当の損得勘定についてお話しします。
【この記事で分かること】
- 「家賃が安いプロパン物件」と「家賃が高い都市ガス物件」、トータルでどっちが得か分かる
- 「プロパンは3倍高い」という話の“からくり”と、実際の請求額とのギャップ
- 検索条件に「都市ガス必須」を入れることで見逃している“お宝物件”の存在
- 固定費(家賃)と変動費(ガス代)をセットで比べる“魔法の計算式”
- プロパン物件を選ぶ時に気をつけたい「ホントにヤバい安物件」の見分け方
「家賃が1万円安い(プロパン)」vs「ガス代が安い(都市ガス)」←勝つのはどっち?
ここが一番の盲点です。
例えば、こんな2つの物件があったとします。
- 物件A:家賃 70,000円(都市ガス)
- 物件B:家賃 60,000円(プロパンガス)
※設備・広さは同じ想定
お客さんの多くは、反射的にこう言います。
「ガス代が安い都市ガスの方が安心だから、Aで!」
気持ちは分かります。
でも、不動産屋としてはこういうクセがついてます。
「ちょっと待って。トータルの生活コストで見てる?」
一人暮らしのガス代の平均は、ざっくりこんなイメージです(使い方にもよりますが):
- 都市ガスの平均:約3,000円
- プロパンの平均:約5,000〜6,000円
※地域差あり
差額は月2,000〜3,000円ほど。
一方で、さっきの例だと家賃差は1万円です。
ざっくり計算すると、こうなります。
物件A(都市ガス)
70,000円(家賃)+ 3,000円(ガス)= 73,000円
物件B(プロパン)
60,000円(家賃)+ 6,000円(ガス)= 66,000円
→ B(プロパン物件)の方が、トータルで月7,000円も安い。
これが、タイトルに書いた「魔法の計算式」の正体です。
■ 魔法の計算式(超シンプル版)
家賃差 ー ガス代差 = 毎月の“本当の差額”
さっきの例だと、
・家賃差:10,000円
・ガス代差:3,000円
なので、
10,000円 − 3,000円 = 7,000円
となります。
「ガス代が高いからプロパンはムリ!」と言いながら、
毎月7,000円の家賃差を見て見ぬふりしている人、正直かなり多いです。
| 項目 | A:都市ガス (家賃7万) |
B:プロパン (家賃6万) |
|---|---|---|
| 家賃 | 70,000円 | 60,000円 |
| ガス代 (目安) |
3,000円 | 6,000円 |
| 毎月の合計 | 73,000円 | 66,000円 7,000円お得! |
実は「プロパンは3倍高い」の数字にはトリックがある
ネットを見ると、こういう表現をよく見かけます。
「プロパンガスの単価は都市ガスの3倍!」
これだけ見ると、そりゃ誰だってビビります。
ただ、この数字には大事な前提が抜けています。
「熱量(パワー)」という視点
- 事実:プロパンガスは、都市ガスの約2.2倍の熱量(パワー)があります。
- つまり:同じだけお湯を沸かすのに、都市ガスなら「2.2」使うところを、プロパンなら「1」の量で済むイメージです。
単価だけで比べるとプロパンは高く見えますが、
「使う量」は少なくて済むので、請求額は“単価3倍”ほどは跳ね上がりません。
実際の現場でも、
「ネットで見たほどエグくはなかった」
「思ったより都市ガスとの差がなかった」
という声はよく聞きます。
もちろん、プロパンの方が高くなりやすいのは事実です。
でもそれは、
「単価3倍=請求額も3倍」
ではなく、
「単価は高いけど、家賃差まで含めて見ると“逆転”することが多い」
という話なんです。
結論:検索条件の「都市ガス」を外してみよう
ここまで読んで、
「家賃も同じで、設備も同じなら、そりゃ都市ガスの方がいいよね?」
というツッコミもあると思います。
それはその通りで、条件が同じなら都市ガスの方が有利です。
ただ、現場でよく見るのはこんなパターンです。
- 都市ガス:家賃7.5万円
- プロパン:家賃6.5万円(同じ広さ・同じエリア)
このときの“考え方”がポイントです。
探し方のスタンスを変える
❌ 損する人の探し方
「都市ガスじゃなきゃ絶対ダメ!」と条件をガチガチに固めてしまう。
⭕️ 得する人の探し方
「都市ガスが理想だけど、家賃が相場より安いならプロパンもアリ」と柔軟に見る。
この“スタンスチェンジ”をするだけで、
- 「都市ガス・ネット無料・駅近・築浅」みたいな“みんなが欲しがる条件”だけに絞る人
- 「プロパンでも、トータルで安くてちゃんとした物件」を狙う人
ここで、ライバルの少ないゾーンに入れるわけです。
(※「条件の優先順位の整理」そのものの考え方は、こっちでも具体的に書きました)
▼ ネットにない「隠し物件」はある?現役店長が教える“不動産屋の裏側”と、いちばん賢い探し方
結果として、
「同じ予算なのに、ワンランク広い部屋」
「同じ広さなのに、駅に近い部屋」
こういう“お得ゾーン”を拾える確率がグッと上がります。
でも、“安いには裏がある”物件には注意
家賃が安い理由は、プロパンだけじゃないこともあります。
- 住人のマナーが悪い
- 周辺の環境が悪い
- 共用部の管理が行き届いていない
こういう理由で「全体的に家賃相場が低くなっているエリア・物件」もあります。
「プロパンだから安い」のか、
「それ以外のヤバい理由で安い」のか——ここは切り分けが必要です。
その見抜き方については、こちらの記事でかなり本音で書きました。
▼ 「家賃が安い」のには必ず“裏”がある。現役店長が教える『格安物件』の本当のリスク
まとめ:固定費(家賃)と変動費(ガス代)をセットで考えろ
最後に、ポイントをもう一度まとめます。
- プロパンを避けるあまり、家賃が高い部屋を選んでしまうのは本末転倒
- 一人暮らしなら、ガス代の差額より「家賃の差額」の方がデカいことが多い
- 「プロパンは3倍高い」という数字は、熱量(パワー)の違いを無視した“見た目の話”
- 実際の請求額は、単価3倍ほどの差はつきにくい
大事なのは、
家賃差 − ガス代差 = 本当の毎月コスト
という“魔法の計算式”でトータルを見ること
そしてもう一つ。
「家賃」と同じくらい、見落とされがちなのが管理費・共益費です。
「管理費0円だからお得」
という物件が、実はぜんぜんお得じゃないパターンもあります。
そのあたりは、こちらの記事でガッツリ掘り下げています。
▼ 「管理費払ってるんだから直せ!」は間違い? 現役店長が教える『管理費・共益費』の本当の意味
「都市ガス以外は論外」という探し方を、一度手放してみてください。
その代わりに、
「トータルの住居費で見て、本当にコスパのいい部屋はどれか?」
という視点を持てると、あなたの選択肢は一気に広がります。
その一歩目が、
検索条件の「都市ガス必須」のチェックを一旦外してみることです。
ここから、“損しない部屋探し”を始めましょう。


